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コーヒーの流通構造問題への対抗策としてのフェアトレード

ドキュメント内 R[q[̎ЉȊwÍ@|ʂėL@R[q[͎sgł̂H| (ページ 37-48)

 ここまで、コーヒーの流通における構造的問題とコーヒー価格の低迷について述べてき た。コーヒー農家の生活は困窮を極め、耕作放棄も相次いでいる状況である。経済学的に はこの状況を、市場原理が適切に働いて価格が元に戻ろうとする必然的なことであると捉 えられるであろうが、途上国の人々のこの摩擦的失業の受け皿はないに等しい79。したがっ てこの状況をただ静観しているわけには行かない。コーヒー農家をできる限り農村にとど めておくほうが、その地域環境や文化の維持などの観点から望ましいのである。しかも、

その農業は持続可能なものでなければならない。

 この問題の有力な解決策として登場してきたのがフェアトレードという交易形態である。

以下このフェアトレードを分析することを通して、この問題の解決は可能であるのか考え たい。

1.7.1 フェアトレードの定義

 本節ではフェアトレードと有機コーヒーとの関係を明らかにするのが目的である。フェ アトレード全般を扱うことは不可能であり、本稿はあくまで有機コーヒーを中心において いるため、ここではフェアトレードそのものの十分な理解と考察ではなく、フェアトレー ドの考え方を概観するにとどめる。

 フェアトレードの定義は団体によって多少差があるが、世界50カ国、160団体が加盟し ている国際的なフェアトレード組織IFAT(International Federation of Alternative Trade)

によれば、「『フェアトレード』とは、国際的な貿易をより平等にするために行われる、対 話と透明性、敬意に基づく貿易のパートナーシップである。特に『南』の弱い立場にある 生産者や労働者の権利を保障し、よりよい条件で取引することで、持続可能な開発を支え る。『フェアトレード組織』は、消費者の支援を受け、生産者の支援や意識啓発、従来の国 際貿易の規則や慣習を変革するための活動に積極的に取り組んでいる」80とある。

また、評価の基準として、主な目的である貿易での貧困削減を達成するための貧困層へ

79 多くの発展途上国は多数の人々が慢性的失業状態にあり、都市に出ても簡単に長期的で生活に足る仕事 が得られる状況にない。

80 People Tree ホームページ  http://www.peopletree.co.jp/pages/ifat_02.html  20031214日より 引用。

の取り組み、透明性と説明責任、商品流通のための努力や生産技術の向上など素質の向上、

消費者への啓発などフェアトレードの推進、公正価格の支払い、女性の地位向上、労働条 件についての配慮、環境への配慮の8項目を挙げている81。要するに発展途上国の人々が作 ったものを公正な価格で取引し、仕事作り、技術支援などの援助を通して継続的な取引を 行い、生活の向上と自立を目指すためのものであるといえよう。

いずれにせよ、現在の貿易形態に問題があり、末端の生産者への搾取的状況を改善する 必要があるという理念がベースになっている。よって取引そのものよりも、国際協力やチ ャリティーといった要素を色濃く残している。

消費者の認知度を高め、基準を設けて信頼性を高めるため、認証機関がフェアトレード の認証ラベルを設けている。現在認証機関がいくつかあり、ラベルも数種類ある。

 フェアトレードはヨーロッパで広く受け入れられている。イギリスでは68%、スイスで は64%の消費者がフェアトレード商品を買う傾向にあるという。また、イギリスでは、84%、

スイスでは84%、オランダでは 66%、ベルギーでは 62%の消費者がフェアトレードマー ク表示した商品の存在を知っている82。1998年のデータによれば、ヨーロッパでは70の団 体が輸入し、7 万もの商品を取り扱い、マーケットシェアは 1.7%であるという83。この割 合は順調に伸びており、フェアトレードは完全にヨーロッパの人々の 1 つの選択肢となっ ている。

1.7.2 コーヒーにおけるフェアトレードの必要性

ここでコーヒー農家を取り巻く問題を再び丁寧に挙げてみることにしよう。

コーヒーにおいてフェアトレードを行う意義は、なんといってもコーヒー価格の不安定 性と、慢性的な低価格の是正にある。コーヒーの価格は、供給過剰によってここ 100 年で 最低の水準にあるといわれている。1997年に1ポンド1.8ドルだった生産者価格が、2002 年には0.4ドルと 5分の1にまで下落した。このレベルは採算割れの状態である。当然農 民は極貧の生活を送らざるを得ない84。そのようなところに豊富で衛生的な水、診療所、質 の良い教育は期待できない85。世界的フェアトレード団体のオックスファム(Oxfam)の調 査によれば、メキシコチアパス州では2001年1月で1ポンドあたり20〜30セントであり、

生産原価は76セントであった。ベラクルス州では農園労働者の賃金はコーヒー豆1キロあ たりの出来高払いで、平均日給は1日1〜2ドルである。1ドルは世界銀行が示す極貧ライ

81 同上。

82 ネパリ・バザーロホームページ  http://www.yk.rim.or.jp/~ngo/history/history.htm  20031214 日参照。

83 ネパリ・バザーロ編、前掲書参照。

84 農民運動全国連絡会ホームページ  http://www.nouminren.ne.jp/dat/200210/2002100704.htm  2003 1224日参照。

85 フェアトレーディング前掲ホームページ参照。

ンである、生活費1日1ドル以下と重なる。チアパス州では多くの人が平均賃金1日4ド ルほどの米国近くの地域へ移住するという。その中には米国へ不法入国する者もいる86。収 穫時期に臨時的に労働者が雇われるということを考慮すると、この賃金レベルでは最低限 の生活すら困難であるといえる。こういった出来高払いの場合、まだ熟しきっていない実 でも摘み取ってしまって重さを稼ごうとするので、豆の質にも悪影響があるものと思われ る。

 現在コーヒー産業には2000 万〜2500 万人の小規模コーヒー生産者がおり、全コーヒー の50%〜70%が小規模コーヒー生産者であるといわれる。また、約1億人が何らかの形で コーヒー産業に関わっているといわれている。その一方で世界のコーヒーの総流通量の約 半分がネスレ社など5社の多国籍企業が占めている87

コーヒー生産量の約30%はブラジルで生産されている。ブラジルは大農園方式が主流で、

少数の大農園主が労働者を雇って大量生産している。そして先述したように、コーヒーは 投機の対象となっている。つまり、世界の相場はブラジルに左右され、特にその少数の大 農園主と大企業の動向によって大きく相場が動くのである。

 大きな問題は小規模生産者はやってくる仲買人に売るか、公示される買い取り価格にし たがって特定の場所まで売りに来なければならないことである。仲買人はできるだけ儲け ようとするので、生産者の目の敵とされていて、メキシコでは「コヨーテ」、ペルーではア マゾンの人食い魚である「ピラニア」と呼ばれている88。生産者、あるいは普通の生産者組 合はコーヒー豆を精選・加工から輸出までを行う技術、設備、ノウハウなどを持ってはい ない。目の前にいる者に渡さなければ現金が手に入らないのである。

 他にも農産物特有の問題がある。先述のようにコーヒーは新しいニュークロップと呼ば れるものが一般においしいといわれ、年月が経過したものは売り物にならない。したがっ て、コーヒーは毎年実をつけるのであるが、たとえコーヒー市場が生産過剰によって価格 が低迷していても売り控えて価格の上昇を待つことができない。毎年新しいものを供給し 続けなければない宿命にある。コーヒーの収穫時期もほぼ同じ時期に集中するために、収 穫を行って売る時期には常に価格が底をついているのである。コーヒーの収穫の時には農 民も 1 年間の蓄えを使い切っている時期でもあり、安くても仲買人に売らざるを得ない状 況にある。また、近年の生産過剰は一過性のものではなく慢性的なものであり、少しの過 剰ではなく相当の過剰状態である。よって霜が生産国に降りてコーヒー畑の全滅が起きな い限り価格上昇が見込める状況にない89

 タンザニアでは競売(TCB)に参加するためのライセンス制度も問題視されている。ラ

86 国際貿易投資研究所ホームページ  http://www.iti.or.jp/coffee.htm  20031028日参照。

87 フェアトレーディング前掲ホームページ参照。

88 ブラウン、前掲書、p.122参照。

89 ブラジルは過去の霜の経験から生産をより温暖な地方へと移動しており、その確率は低い(柴田書店書 籍部、前掲書、p.42参照)

イセンス制度は自由に競売に参加できないため、結果としてライセンスを持つもの同士で 談合が生まれ、競売ではなくなっている。さらに仲買人が豆を競売にかけ、そして同じ競 売に参加し、損のない価格で競り落とすという、腐敗したシステムになってしまっている90。 単に国際市場低迷という理由だけではない構造的理由が存在しているのである。

生産効率性を上げ、より安く生産することにかけては、小規模生産者は大農園や多国籍 企業にはかなわない。小規模生産者は価格面ではどうやっても不利である。国際市場価格 は大企業側の額が反映されるので、市場で取引しようとすれば、低価格で取引するしかな いのである。オックスファムによれば、消費者価格に占めるコーヒー栽培農家の取り分は、

その2%以下であるという91。このような状況では次の投資もできない。コーヒーの木は老 齢化し、新しい道具も買えない。コーヒーを後継しようとするものはいない。農家の高齢 化は進んでおり、若者は都市に出る。都市の過密化は途上国の大きな問題となっている。

それでも、残された者はコーヒーを栽培するしかない92。そして、そのようなぎりぎりの状 況で、見返りもなく作られたものに高い品質を望むことはできないのである。こうしてコ ーヒーはその品質を低下させ、最終的に消費者にも悪影響を与える。

こういった状況があって、コーヒー生産者に最低価格を保証し、生活を向上させること を目的としたフェアトレードが導入される必要性が出てきたのである。一刻の猶予もない 中で国家レベルの取り組みに期待できる状況はしばらく見込めないため、NGOなどの草の 根レベル、民間レベルでの解決を模索するほうが現実的となっているのである。

1.7.3 コーヒーのフェアトレードの方法

 先述したようにコーヒーが輸出されるまでには多くの経路が存在し、それぞれに仲介人 が入る93。フェアトレード団体はここに一貫したルートを築き、生産から輸出、販売までを 行う(図1-14を参照)。

 コーヒーのフェアトレードはまずは生産者協同組合を作り、契約を結ぶ。組合を作るこ とは困難を伴う。農民を組織化することを警戒する状況が残っている中で、NGOや教会が 大きな役割を果たしている。また、商品化も農民だけで行うことは難しい94。外部から手を 加えなければ、生産者が自然に組織化し、商品化して力をつけるということは難しいので ある。

コーヒーの場合のフェアトレードの基準は、団体がいくつもあるために統一されてはい ない。しかし、大きな違いはない。中心となるものは、国際市場価格に関わらない最低保

90 タンザニア・ポレポレクラブ編、前掲書、p.18参照。

91 農民運動全国連絡会前掲ホームページ参照。

92 タンザニア・ポレポレクラブ編、前掲書、p.21参照。

93 1章の流通経路の図を参照。

94 国際貿易投資研究所前掲ホームページ参照。

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